楽しく奇妙な夜

一昨日に親しい友から高槻に来るから飲まないかと誘われ、昨日仕事が終わってから出かけてきた。阪急駅前の安酒屋の奥の席がいつもの溜まり場である。以前勤めていた会社のI先輩とデザイン(図案)をお願いしていたH氏と僕の三人で月に一度飲んでいるのである。退社して既に二十年余り。I先輩はそのままその会社の専務になったあと会社が倒産、その後再就職を果たした。H氏は図案だけでは食えないとシルバー人材センターに登録をし、僕は鍼灸師になった。三者三様に生きてきた訳だが「ようよう!」という言葉だけで酒を酌み交わし話が弾む。焼酎一本(五合瓶)を注文することも毎回同じ。仕事の話、釣りの話、絵画のこと、そして酔いが進むに任せて外交問題、国政、経済と論を交わすことも相変わらずの愉しみなのである。話は尽きそうもなかったが来月の釣りの約束をして、お互いの健康を願いつつ10時に解散となった。

普段この後一杯だけの寄り道をしているので、昨夜もふらっと「福田バー」のドアを開いた。

先ずはブラディマリー。どうやらこれが最近の定番。トマトの成分が悪酔を防いでくれるようだ。しかも添えられたセロリとのハーモニーがいい。いや〜美味しい。

図らずも二杯目。ラフロイグに鰤の酒浸し。アイラ島シングルモルトは臭い。中でもラフロイグの泥炭臭は強烈である。
何故か僕はこれが大好きだ。妙に刺身に合うのも好きになった原因。海に面した酒蔵で作られるためであろうか潮の香りに調和する。
ここらあたりから隣に座る男性の話すことが気になりだした。ラム酒についてマスターと遣り取りをしている。僕も少々酔いがまわってきてスルリとその話の輪の中に入れてもらった。

マスターお勧めのラム、ネイソン・XO。逸品である。お値段もお高い(笑)これをストレートで飲む。ラム酒はたいがいカラメルで色付けがされているのだそうだが、ネイソンに関しては古樽の醸しだす色そのものだそうで見事な琥珀色をしており、香りの甘さと鼻に突き抜ける炎のようなアルコールとの心地良いギャップが何とも言えず 旨い。
この頃には隣の男性、東大出身でIT関連の仕事を起業されているF氏とは昵懇となり、話が盛り上がってきた。と、そこへそのまた隣に独り座る女性が参加してマスターに注意されるほどの大団円となってきた。注文したチーズの盛り合わせにはミモレットが入っていたことしか覚えていないが(他の生っぽいチーズが絶品だったが名前を失念)、Sさんというその美人女性は看護婦であるということとご子息が高校生であるということはしっかり覚えている。しばし大歓談と相成る。
その後三人は初対面というのにこのまま帰るのも名残惜しいということで、場所を変えようと(バーでは騒げません)勘定を済ませ、マスターに頭を下げて外に出る。駅前の交番の前まで来てまたまた歓談。どこへ行こうか迷っているうちにふと時計を見れば時刻は三時。全く残念ではあるが、今日のところはこれにてお開きということで、しっかりお互いの携帯番号メアド交換を済ませ、Sさんを軽くハグしてタクシーに乗り込んだ。
Sさんはほんのり薔薇の香りがしていた。