ボストンとタルトタタン

まあ、お決まりなんですけどね。
京都の岡崎へ出かけたら、ほとんど必ず立ち寄るお店が「ラ・ヴァチュール」


先月、見事敵前逃亡した「ボストン美術館展」を観に行く。内容は17世紀から19世紀(あ、ピカソキュビズムのが一枚あったので20世紀もか)の西洋画をさっくりと見せてくれているのだが、ボストンと言えばモネの収蔵。今回も10数点が一同に。今回それが一番目当てで、水彩画のスランプの脱出に何かヒントになるかなと思って。絵の前に佇むこと数十分、ちょっとまた絵画の深淵に触れた気がしてハッとなる。ついでに(失礼な!)レンブラント大師匠の例外的なほぼ全身の肖像画も。当時は値段の関係で肖像画の依頼はバストアップが多いのだが、かの大師匠に全身像を夫婦揃って依頼するとは相当な大金持ちだったのだろう。何やかやと二時間余りを過ごして退場。

それにしても、と考えてしまう。どうして美は天才を必要とするのだろう。天才にのみ美はなし得るものだろうか。而してその天才もまた時代とともにより高き天才に凌駕されてゆくのか。我々凡人には美の救いはないのだろうか。そもそも美とはいったい何者なのだろう。人は何をもって美しいと思えるのか。

そしてその後、トコトコと炎天の下、欅街路樹の日陰を繋ぎながら「ラ・ヴァチュール」へ。

ここは何と言ってもタルトタタン。岡崎の美術館イコールタルトタタンなんである。これを焼いておられたこの店の名物女将は今年九十歳になられたらしい。今もお店に顔を出されるらしい。素晴らしいことだ。甘い香りとほんのり香ばしいタルトタタンは昔と変わらない味だ。