京都北山大回り

北山杉

四条通りをゆっくりと
君の おもいで残したとこを
黒いダッフルコート着て
背中丸めて 歩いてます
あの頃二人は 清水の
長い石段 登って降りて
青春色の 京都の町を
じっと じっと 見つめていました

冷たい雨が雪になり
君の足跡 かくれて消えて
涙 まじりの雪払い
北山杉を 想い出します
あの頃二人は 大覚の
白い石仏 触れたり見たり
青春色の 京都の町を
静かに静かに 歩いていました♪

70年代フォークグループ「うめまつり」の曲ですね。

ということで今日は京都北山を大回りしてきました。実はこのコースは私が高校生の時に練習として走っていたコースなのです。まさに上記の曲を鼻歌交じりで唄いながら走っていました。みつめてぇ〜、い、ま、し、た〜 と。
具体的には自宅から嵐山、観光道路で衣笠、金閣寺から鷹が峯を経て京見峠、杉坂から小野郷を越え細野を西に行き、越畑から神明峠、水尾を越えて難関六丁峠で嵯峨鳥居本へ出る。そして再び嵐山に戻り高槻まで西国(物集女)街道を走るというものです。当時は嵐山に住んでいましたので今回は往復50キロほど余分でしたが、走っているうちに懐かしさが込み上げてきました。あれから三十数年経った今でも、こうして同じ道を自転車で走っているという不思議さと有難さ。去年の事故で一時はもう自転車には乗れないかも知れないと思っていましたから、今日のコースは余計感慨ひとしおでした。
さて、柳田國男の本の中にたしか峠について論じているものがあったと記憶していますが、旧道における峠には表と裏があってその峠までの坂が緩く続くほうが表であり、いささか急峻に急ぎ足で上るほうが裏だと仰ってます。その点で謂えば京見峠は典型的に北側が表と見るのが正しいでしょう。小浜の地から十三里の道を越え京の都へ海産物などを運んだ鯖街道の支線と見るべきか、はたまた北にある氷室から朝廷に捧げる氷を運んだ道であるのか、この峠は北から上るのが正当なんでしょう。実際には旧京見峠は今の道とは違いますが、視界が開けて京の町がさっと遠望できた時は感動したでしょうね。鷹が峯から峠に向かうとちっとも京が見れませんもん。
まずは嵐山まで走り、そこから車折神社の少し東の裏道で嵯峨野の広沢池畔へ出ます。そこから所謂観光道路で鳴滝、御室仁和寺竜安寺、衣笠立命館前、と通り過ぎ鹿苑寺金閣)前まで一息に走ります。ここから真っすぐ北に道を取り「しょうざん」前を過ぎ、ここで京都名物、スーパー激坂登場です。

ほんの200メートル程ですが、あまりの激坂っぷりにたじろぎます。途中斜度は27%!しかもそこそこ車が通るので怖い怖い。

頭上に注目、これもここの名物、真上にあるミラー。急坂過ぎて上から目線でないと対向車が見られないんですね。でも若い頃はここ上ってましたよ。今日はもちろん押しが入ります。上ると直ぐに左折していよいよ京見峠の取り付きです。平均7%ほどの道です。昔はゴミだらけで不愉快でしたが今は案外整理整頓されて小奇麗な道になっていました。暫くクネクネと上ると右に視界が開け、比叡山が望めます。

今回はこちらのほうを写してしまいました。なんか遠くへ来た感じがしますね。するとそこへ自転車の一団がスピードを上げて下りて来ました。あ、これはこれは!そうなんです、某SNSの自転車コミュで今日、ここらへんを走ると耳に挟んでいたのですが、まさしくこの時遭遇しました。

皆さんカッコ良かったです。あっという間に見えなくなった集団を後にしてもう少し頑張って上りました。

峠の茶店に到着です。道は本当はこの後暫く上りますがここが旧道の峠に近いのです。生憎今日は休業で残念でしたが、ここのうどんが美味いのです。ぜんざいもいけます。

疲れた身体にはもってこいなんですが、今日は缶ココアで我慢です。

暫く雰囲気を味わってから、いよいよ杉坂までの爽快な下りを楽しみます。特にこのあたりの道の風情が如何にも北山らしくて大好きなんです。途中氷室へ向かう三叉路を左に折れます。さすが昔の氷の貯蔵庫があった付近らしく空気は相当冷えてきます。

32cのタイヤは大正解でした。ウェットな路面でも木の葉敷きの道でも物ともしません。しかし今日はガシガシ踏むのは止めました。感傷に浸るのもたまには良いと思いませんか。程なく道は国道162号線(周山街道)へ出ます。ここから細野までちょっと怖い国道走行です。実はずっと緩い上り勾配の笠トンネルが嫌いで旧峠に向かうつもりでしたが、ゲートがしっかり遮っておりあえなく断念、前後ライト点灯、サドルバックには念のため反射板も取り付けトンネルに挑みました。何台かの爆音ハーレー野郎に驚かされましたが何とか脱出成功。もうほんとにトンネルは大嫌いです。

細野に到着、左折して八木方面へ向かいます。しかしこの角の喫茶店、昔は車で随分通ったものですが今は潰れてしまいました。隔世の感ありです。

ここで缶ぜんざい購入。あんこ系はしっかりエネルギーになる気がしています。しかも大好きなんです、ぜんざい。缶には「おしるこ」とありますが小豆の粒が入ってる場合、断固として私はぜんざいと呼びます。メーカーの誤謬と思われます。おしるこは大嫌いなんです。あんなもの女子供が食べるものとタカをくくってます(差別発言禁止、陳謝)。

まあそれはそれとして、先へ進みます。ここからの道も素晴らしいのです。ただブラインドカーブが多くいきなり車が出てきて肝を冷やす事が多いのですが楽しめます。

鬱蒼とした杉林の中を走り抜け、八木町、廻り田池から越畑(こしがはた)へ上って行きます。樒原(しきみはら)までが案外急坂できついところで13%ほど、今日は自転車が重いのでエッチラオッチラ上って行きます。

この立派な家が外国のかたがお住まいの有名なお宅です。それにしても大多数の我々日本人は板張りに壁紙はって誤魔化しているというのに、こんな凄い純日本家屋の邸宅に外国の人がお住まいとは恐れ入りました。日本人より日本的ですね。

樒原の見事な段々田を後ろにしていよいよ神明峠へ取り掛かります。その前に

今日、出しなに家内から貰ったチョコレート、そのままバッグに詰めて来ました。そういえば今日はセント・バレンタイン・デーじゃないですか。この日チョコレートを女子が渡す習慣は戦後モロゾフが発案したらしい(他の説もあり)日本だけのアイデア。逞しい商魂の賜物ですがそれでも貰ったほうは嬉しくないわけはないんでして、ここでほうばったチョコの味はそれはもう最高に美味しかったです。これでパワーもりもりです。しかし、実はこの神明峠、ちょっと不思議なんですが標識のある地点は峠ではありません。旧道の峠が近くにあるのでそんなことになっているのです。ややこしいです。しかも樒原からだと案外緩い上りです。そこからはまた快適な下り基調の道が延々と落合まで続きます。

水尾集落を過ぎて、山陰線の橋梁が見えたら落合はもうすぐです。何度か短いトンネルをくぐって赤い橋があるところが落合。高尾川と保津川桂川)の合流点です。さあここからが本日の最難関、メーンエベント、六丁峠の激九十九折れの取り付きです。平均斜度15%程、最大21%(メーター読み)という聞きしに勝る激坂です。それでもチョコパワーで頑張ります。

登頂成功です。途中速度が7キロ程になりましたが何とか上りました。若い頃はグングン上ってたのに歳には勝てないですね。しかし上りきった清々しい気持ちはむしろ今のほうがあるように思いました。
嵐山に帰り別宅でちょっと用足しをした後、顔見知りのラーメン屋で腹を満たして西国街道をひた走り四時過ぎに無事帰宅しました。100キロ程度の距離でしたが大満足でした。
余談ですが、初めて股ズレを経験しました。風呂に入ってヒリヒリです。