怒涛の北摂十二峠巡り

六月十日(水)
雨天。一日忙し。十二時間労働。

六月十一日(木)
朝曇り、のち晴。
午前中、京都の実家。二階西窓にカーテン取り付け。猫トイレ奇麗にする。母は頗る元気。返って独りになった今のほうが本来の母の姿なのだと思う。非常に良く笑う。
午飯は近所の小川珈琲本店でパスタランチ。千円也。
二時帰宅。ガレージ上のニントウの剪定する。

葉が落ちて困るので強く剪定する。
片付けた後、吹田の自転車屋へ行く。先日支払ったパナチタンの代金に過分があり返してもらう。4万数千円也。
T氏呼びかけのお茶会が大阪であったのだがお流れになったのでそのまま帰路に就くも腹が減ったので久しぶりに豊中五大力へ行く。

焼きチャーシュー塩を注文。本物志向からするとこの店のブイヨンベーススープは邪道かも知れぬが私は大好きである。ラーメンというより麺の入ったスープのような感か。元気が出てきたので伊丹から一気に梅田シルベストへ。つまらぬものだが案外輪行には重宝する物を買う。六百数十円。今度は新御堂を一気に箕面へ。

締めくくりにIchirin Cafe。

柄にも無いものを食べる。

六月十二日(金)
晴。ピナレロのペダルから最近異音がしだしたので交換。

数ヶ月前に買っておいたLook Keo Ti。ロンドンの大手通販で入手。国内で買うよりずっと安い。カーボンボディにチタンシャフト。最も軽量のペダル。
慎重にクリートを調整し、昼休みに試走を目論むも叶わず。仕事が忙しい。
仕事が忙しいのは喜ばしい事だが、比例して神経がピリピリしてくる。こっちも真剣勝負をしているのだから当たり前で、むしろその緊張感が生甲斐ともいえるが矛先を向けられる家内は堪ったものではないだろう。つい言葉尻に棘を孕ませてしまう。おまけに下痢が酷くなる。夕食の手作りのハンバーグは美味しかったが何も言わず、風呂のあとすぐに寝てしまう。
真夜中に目覚める。悪夢見る。得体の知れぬ男がナイフを持って私を殺しに来る夢。目覚めて後も恐怖感が暫く残った。罰が当ったと思う。ちなみに印象に残った夢は全て記録している。当然この夜の夢も記録しておいた。

ふと以前の台湾を思い出した。
台北市バスの後に大きく書かれていた標語

為策安全
保持距離

だったか。交通標語の裏に当時の中国との関係を上手く捉えた標語であった。

六月十三日(土)
朝薄曇。後晴。梅雨らしからぬ陽気。
昼前、新しい万年筆が届く。二十年来使い続けた万年筆が駄目になり購入、同じセーラー製。今時万年筆なぞ骨董品か道楽かと思われがちだが私には現役である。ほとんど全ての書類、カルテ、手紙、日記、デッサンに至るまで万年筆で書く。
午後一時過ぎに家内を送る。縁者の葬儀。三時まで仕事がなくなったのでピナレロで走る。ペダルの感触は軸が直接拇指球に当る感じ。そのせいか判らぬがサドルを数ミリ下げねばならなくなった。何故か左が入りにくい。慣れの問題か。

帰路に立ち寄った二料山荘。あたりにはいまだ卯の花が咲き乱れている。

四十キロ走ったが最近慣れが生じたのか脚にこない。カロリー消費も以前より少なくなった。
もっともがかねば気が済まないので明日は面白いコースを走ることにする。
※消費カロリーが少なくなったのはフォームに無駄がなくなった為ともいえる。いつも身体の正中線を意識するよう走ることが良いのだと思う。この事は日常生活に於いても、仕事に於いても言える事だ。

六月十四日(日)
晴。やっと本題の当日。今日は九時に出立。ピナレロ北摂に数ある峠、登り道を一挙十二本連続で走る。
走行距離115キロ。消費カロリー2051Kcal。走行時間4時間27分。
先ずはいつもながら府道6号で亀岡へ。ここで樫田峠を越える。手前で自転車の一団に出会い最後の登りで一団の最後尾を一気に千切る。先頭に追いついたところ勝負を挑まれたので応戦。国道9号手前でかわす。一団はそのまま9号へ。声を掛け合って別れる。当方手前で左折して二本目、平和台公園への上り。
一旦ガレリアまで出て休憩。この時二十台ほどのハーレー集団が爆音と共に現れる。見れば白髪混じりの親父も多い。
全く無法者の集まりだ。分別のあるはずの年代が餓鬼の暴走と変わらんことをするとは幼稚極まりなし。
呆れる馬鹿者達だ。
気分が悪いので直ぐに走り出す。三本目、湯の花温泉への上り。ここは距離は短いがそこそこの勾配、しかも最後は直線という精神的に辛い坂だ。

上りついた国道372号の三叉路で写真一枚。
ここから旧道を走る。

この旧道は好みの道の一つ、緩やかなアップダウンがあって楽しい上に交通量が非常に少ない。
八幡宮の巨木を過ぎたあたりから旧天引峠へ。四本目。

数年前にトンネルが開通したあとは殆ど廃道になっているがアスファルトは結構しっかりしていた。
しかし、ここでアクシデント。もうすぐ峠にさしかかるというその時、自転車の前一メートルを一頭の鹿が飛び出して来た。慌ててブレーキをかけ何とか鹿の体当たりは避けられたが、道に落ちていた木の枝に前輪を取られ、敢え無く転倒。杉の枝の堆積で衝撃はふわりとしたもので幸い腕を擦り剥くだけで済んだが、一年振りの落車。向こうでさっきの鹿がこちらを向いている。目が笑っていたように思う。非常に悔し。

車体に傷も無し。コケ上手。手前は乗り上げた枝。
バイクツーリングでお馴染み、安田のローソンで小休止。

こんなもの以前にあったか。

この後五本目、国道372号、茶屋峠。ここは峠というほどでも無しであっという間。
そして日置東から県道12号を南進。本日六本目にしてやっと本格峠、古坂峠を越える。

ここで初めてフロントインナーにする。峠へのアプローチが意外と長いので骨が折れる。最後の連続ヘアピンの登りが斜度あり。峠は暗いトンネル。ここでまたアクシデント。フロントをアウターに入れようとしたタイミングと路面の突き上げが重なり、チェーン外れ。暗いトンネル内でチェーンを嵌めるのは恐怖。
ほうほうの体で抜け出し、篭の坊まで一気に下る。快適なり。
だが、楽はここまで。交差点を過ぎたあたりから七本目、西峠への上りが始まる。この峠も長いアプローチで辛い。
いよいよ脚が痛み出す。

面白いバス停発見。飲み物一気飲みする。
後もう少し上る。

西峠到着。ここから猪名川町。このあと暫くは延々下る。非常に快適、快走なり。
杉生の交差点を左折して八本目、猪名川変電所への上り、山田峠?を越える。

この峠、勾配はさほどでもないが案外峠が向こうにあってがっかりさせられる。嫌な峠だ。
国道173号の交差点、栗栖を過ぎて九本目、名月峠。

月姫の悲しい物語に思いを馳せる。
さてここから無謀にも堀越峠を目指す。十本目。既に相当脚に来ているので不安がよぎるが、最初からインナー、ローで上りだす。何と言っても北摂最高難度、最大勾配24%堀越西側の上りだ、慎重に上る。左の膝辺りが攣り出すも右の引き足でカバー。最後の右カーブ急坂を上る頃には意識が遠のく。

必死の思いで登りきる。時間がかかった。そしてここでのお決まり、放尿す。

さて終盤は気に入りの道なのでさぞ楽しかろうと思いきや、どうも脚が回らぬ。力が入らぬ。考えると安田ローソンで食った握り飯が二つだけ。後は水のみ。カロリー不足でハンガーノックのよう。
それでも十一本目、柚原までの上りをゆらゆらと上る。柚原にはヤマザキストアがあり。飛び込んでコーラに菓子パン、ヴィダーインゼリーを貪り食う。小休止。
この店は大の気に入り。

店の名前が格別だからだ。

数人の自転車乗りを見過ごし、15分ほど休憩して走り出す。
登りは直ぐ先で終わりそこから暫く下り快走。汗が飛んで消えて行くようだ。

最後十二本目は樫田への上りを経て帰宅。三時半過ぎである。何やかやで結構途中休んでいる。写真の撮りすぎか。
しかしこれが今の実力なのだろう。
直ぐにシャワー、ウェアは洗濯機へ直行。尻が痒い。汗疹が出来ている。薬を塗る。
見るとヘルメットの紐が塩で真っ白になっている。記念に洗わずにする。

マッサージの後、車で街に出る。預けておいた時計が直ったらしい。修理代二万数千円也。
抽選券もらう。十九回。結局はずれと5等金券のみ。
金券でドトールに行く。

はずれは菓子だった。何となく嬉しい。

脚が今もやや火照っているが、それもまた快感である。久しぶりに走り倒した休日だった。

さすがに一茶は一頁すら読めずに寝る。