不可思議な体験

昨日は仕事の関係もあって少し早い盂蘭盆会の墓参に出かけたあと、GSで少しばかり近場を流してきました。一ヶ月ほど放置していたバイクなのでバッテリーのためにもこのへんで走らせておこうというのと、一昨日買ったクシタニのレザーパンツ「エクスプローラー パンチングメッシュ」のはき心地を見るためでした。結論からいうとどんなパンツも止まってたら暑いという尤も至極な感想でした。で、大汗をかきかき帰宅して水風呂へ直行。体を冷やして軽い食事と珈琲飲んで、今度はこれもつい最近手に入れたPowerCal(サイクロプス製の胸につけるタイプのパワーメーター)のテストのために自転車に乗りました。一週間ほどのご無沙汰と言うこともあったのでしょうか、昨日は妙に身体が重くタイムが伸びません。パワーも180w平均ぐらいを表示していました。いつもの練習コースを走っていたのですが、気がつくと4,50mほど先を一人のサイクリストが走っていす。カーボンカラーのメットに白のシンプルなジャージ、グレーのパンツを履いて後ろから見る限りではどうやらバイクはピナレロの10年ほど前のパリスだろうか。淡々と一定の速さでペダリングを続けています。後ろ姿に何となく見覚えがあるように思えたので、僕はあとを追おうと距離を詰めにかかりました。ところが、いくら漕いでも二人の距離は増えもせず減りもせず、ほとんど一定に留まったまま変わりません。道は森陰を抜けて開けた棚田の横を抜けて行きます。ヒグラシの声が遠ざかり辺りには夕日の斜光線が昼間の火照りを残しながら輝いています。すると、その時全く予期せぬことが起こりました。その前を走る白いジャージの人影が何とその棚田を突っ切って真っ直ぐに右手の森の中へ消えて行ってしまいました。しかも全く速度を落とすことなく、音もさせずに、滑るように。僕はそのサイクリストが道を別れたところへ大急ぎで行って見ましたが、そこには頑丈な獣用の柵がしてあるばかりで、どこにも道はありません。暫く呆然としたあとこの奇妙な出来事について考えてみましたが、暑さか何かで幻覚を見たにしてはあまりに現実的で、相手の人影になんとなく懐かしさのようなものも感じていましたから、いっそう奇妙でした。光に当たった緑の稲穂のうえを真っ白なジャージが音もなく滑るように走ってゆき、夢幻のように消えてゆきました。